いろは綜合法律事務所

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借金問題・債務整理コラム集

人権保障の最後の砦

お金を貸す時に、取って良い利息は、法律(利息制限法)で上限が決まっています。

10万円までを貸すときは年20%まで、10万円以上100万円までを貸すときは年18%、100万円以上を貸すときは年15%までです。

なぜ、契約自由の世の中で、このような制限を法が規定するかと言うと、任意で自由に、例えば年100%の利息をとることを放置すると、到底、借り主は払えなくなって、無理な取り立てを誘発し、借り主が自殺や失踪という事態に追い込まれることが目に見えているからです。

では、なぜ、15%から20%までと規定されているのか、その数字の根拠は何かと言うと、この15%から20%というところが、利息として支払っても、生活を何とかやっていける限界地点だからです。

サラ金等で、お金を借りる人は、その時、手元にお金がないから借りるのが通常です。
そうすると、返済が期待できる原資としては、毎月入ってくる給料しかないわけです。
そして、その給料は全て返済に回せるわけがありません。
家賃・食費・光熱費等の生活費が当然かかります。
そうすると、返済に回しても生活がなんとか成り立つという利息の上限は年15%~20%ということが社会学的に経験則上、明らかになり、国会で利息制限法が制定されたのです。

にもかかわらず、国会は、その経験則に反するような法律を後に作ってしまったのです。
それが、出資法という法律です。
任意で利息を支払ったときには、年29.2%(昔は40.004%、もっと昔は100%以上)まで利息をとってよいですよ(みなし弁済)という法律です。
そして、この出資法に乗っ取り、多くのサラ金やクレジット会社は、29.2%の金利をとっていたわけです。

しかし、15%~20%以上の金利をとると、生活が成り行かなくなるということが経験則上、国会はわかっていながら、それ以上の金利を取ることを是認することは、借り主が自殺・失踪することもやむを得ない、それよりも貸金業界の利益を優先しようという姿勢がありありと見えます。
しかし、こんなバカな話はありません。
国民の人権を守る一躍を担っているはずの国会が、国民に対してキバをむくのですから。
まあ、このようなことは、歴史上よくあることですが・・・

このような国会の節操のない態度、不埒な態度に対し、「ノー」という結論を突きつけたのが、裁判所です。
裁判所は、このみなし弁済をほとんど認めないということで、出資法の金利を実質的に死文化させました。

その結果、引き直し計算というものが生まれ、さらに過払い金返還請求も広く認められるようになったのです。
そして、2010年12月までに、15%~20%と29.2%の間のいわゆるグレーゾーン金利は撤廃され、利息制限法の20%が上限というように法律が改正されました。

このグレーゾーン金利問題については、国会の行き過ぎ、無茶ぶりに、裁判所が、「人権保障の最後の砦」として機能した好例だと思います。

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