過払い金返還請求コラム集
貸付無視計算
オリエントコーポレーション、略してオリコというクレジット会社があります。
オリックスと名前が似ているので、関連会社みたいに思われるのですが、ウィキペディアによると、オリックスとは、全然関係ないそうです。
このオリコ、平成5年から平成7年以前の取引履歴は、既に廃棄したので、社内にないと言って、平成5年~7年以降のものしか出してきません。
ただし、入金履歴だけは残っているということで、マイクロフィルムから焼き起こしたものを出してきます。
入金履歴というのは、まさに、いつ、いくら返したかの、返済の記録だけが載っているものです。
したがって、平成5年~7年以前の貸付の記録はわかりません。
そうすると、平成5年~7年以前から取引があったことが分かっている場合、完全な取引履歴がないので、どう引き直し計算して、どう過払い金返還請求するか問題が生じてきます。
この場合、取り得る方法は、主に以下の3つだと思います。
まず、1つ目は、完全に開示してきた平成5年~7年以降の取引履歴だけで、引き直し計算し、それ以前の取引は無視する方法です。
しかし、それ以前も、入金履歴や依頼者からの聞き取りにより、取引があったことは確かなのに、これを全て無視して切り捨てるというのは、返ってくる過払い金が減り、また不当な利益を業者に残すということになり、履歴開示しない者が有利な結果になるので、到底、取り得ません。
次に、2つ目としては、依頼者からの聞き取りや、当時の通帳等から、平成5年から平成7年以前の取引を再現して、推定で計算するという方法です。
しかし、この方法は、そのような古い記録や記憶が常に残っているとは限りませんし、なにより、作業量が多くて非常に大変です。
そこで、貸付無視計算という方法が出てきます。貸付無視計算というのは、開示された入金履歴と完全な取引履歴のまま、データを打ち込んでいくという方法です。
この方法だと、そのまま、開示されたものを打ち込むだけなので、推定計算のような面倒くささはないです。
この方法だと、最初は、入金の記録だけなので、いきなり過払いの状態で始まり、あっという間に、多額の過払い金が計算上は発生することになります。
私が、実際にやった事件も、取引期間が長く、かつ返済額が多かったので、この貸付無視計算で引き直し計算をしたら、計算上、過払い金が2500万円を超えました。
ただ、この貸付無視計算をオリコが簡単に認めるかというと、絶対にオリコが認めることはないでしょう。
そうなると、貸付無視計算を認めさせようとするならば、裁判をしなければならないということになります。
しかし、裁判所も、簡単には、この主張は認めてくれないでしょう。
貸付もないのに、返済だけをしていたなどということは、社会通念上、ありえないからです。
もちろん、この貸付無視計算を認めた下級審判例もありますが・・・
したがって、どの方法も、帯に短し、襷に長しです。
まあ、貸付無視計算で、過払い金の請求書をあげて、向こうから推定計算書が出されてきたら、それと、依頼者の記憶・記録を整合させて、そんなに食い違いがないようだったら、その推定計算で和解するというのが一番穏当な方法でしょうか。
先の、計算上2500万円の過払金が出た事案でも、2500万円で請求書をオリコにあげたら、担当者から電話がすぐかかってきて、ちょっと笑いながら、「例の2500万円、過払金を請求されている件ですが、推定計算書送ります」と言われ、そんなに、依頼者の話とも相違点がなかったので、推定計算で和解しました。
訴額2500万円で、訴訟しようと思ったら、裁判所に納める収入印紙だけで、8万円ぐらいもかかりますし、勝訴しても、額が大きいだけに控訴・上告されて、最高裁まで行っちゃいますし。
そうすると、入金に時間がかかり、他の返済との関係で任意整理が成り立たなくなってしまいますし、まあ仕方ないですね。
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