いろは綜合法律事務所

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過払い金返還請求コラム集

不当利得と不法行為

過払い金返還請求訴訟というのは、法律的に言うと、「不当利得返還請求」ということになります。
「不当利得返還請求」というのは、本来あるべき姿に、戻しましょうという訴訟です。

過払い金返還で言うと、サラ金等が取りすぎている利息は、本来、借り主の下にないといけないのに、それがサラ金の下にいってしまっているので、本来のあるべき借り主の下に戻しましょうということになります。

しかし、最近、過払い返還請求自体が「不法行為に基づく損害賠償請求」で認めるという判決が、下級審でちょっとずつ出だしています。

不法行為というのは、加害者は悪いことをしましたので、それによって被害を受けた人は、その被害額を加害者に弁償してもらおうというものです。

過払い金返還で言うと、法律上、取ってはいけない利息であることをわかりながら、借り主の無知に乗じてサラ金は高い利息を取って、その結果、借り主に払わなくてもよい費用を払っていたという損害が生じたので、弁償してくださいということになります。

過払い請求において、この不法行為構成が認められ出したということは、消費者にとって有利に働く可能性が大いにあるような気がします。

それは、以下の3点が、「不当利得」と「不法行為」では異なるからです。

まず、1点目は、不当利得返還では、それだけでは慰謝料(精神的損害)までは認められないのに対し、不法行為では、慰謝料まで認められる可能性があるという点です。

なぜなら、不当利得返還請求には、良いや悪いなどの評価の問題は生じないのに対し、不法行為は、悪いという評価の問題が絡み、その結果、慰謝料も認められるということになるからです。

2点目は、不当利得では認められない弁護士費用が、不法行為では認められる可能性があるという点です。

したがって、不法行為構成の方が、回収できる額が増える可能性が高くなります(ただし、その分、立証も大変になりますが・・・)。

そして、3点目が一番大きいと思います。

それは、時効の問題です。

不当利得構成だと、最後の契約から10年が経つと過払い請求ができなくなります。

これに対し、不法行為構成だと、時効は、損害及び加害者を知ったときから3年です。
単純に考えると、不法行為の方が短いので損な気がします。
しかし、損害を知ったときから3年なので、不当利得の場合とは開始時期が違います。

例えば、最後の契約から12年経っているが、去年、自分が過払いになっていることを知ったという場合にも、損害を知ったのは、去年ということになるので、過払い請求が時効にかからない可能性があるということになるのです。

ただし、損害があったときから20年という除斥期間(時効と同じようなものです)がありますので、最高でも遡れる期間は20年までという制約がありますが・・・

したがって、最後の契約から10年以上20年未満の人は、今までは、時効の壁で過払い請求は阻まれていたのですが、不法行為構成だと、時効にかからず、過払い請求できる可能性が広がってきたのです。

ただし、ここらの議論は、まだ、あまり煮詰まってなく、また、立証も大変なので、まだまだ難しい面はいろいろあると思いますが・・・。

これからの、過払い請求判例にも要注目ということでしょうか。

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